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NEW ALBUMのプロデューサー西寺郷太(NONA REEVES)によるライナーノーツを公開

近藤利樹 Album《Hello! Hello!》
「完成」直後に執筆したプロデューサーとしてのライナーノーツ
西寺郷太

天才少年ウクレレ・プレイヤーとして、11歳でデビュー。世に出た近藤利樹——今もなお成長の真っ只中にある彼の瑞々しい歌声が、アルバム《Hello! Hello!》には封じ込められている。本作は彼にとって、ある意味で“2度目のデビュー”であり、再出発の狼煙だ。
マイケル・ジャクソンが大人になって初めて完成させた『オフ・ザ・ウォール』のようなイメージで、僕はこのアルバムのプロデュースを進めた。彼の才能と輝きは、まさにここから。ファンファーレのような瑞々しいポップ・チューンから、本作は始まる。
以下、それぞれの曲にまつわるエピソード、選曲の意図、制作の流れを備忘録的に書き留めておきたい。

1. HELLO! HELLO!
作詞:西寺郷太・近藤利樹 作曲:西寺郷太・Kuboty
編曲:西寺郷太・Kuboty
ギタリスト/ソングライターの Kuboty と出会ったのは、彼がまだ TOTALFAT のメンバーだった頃。10年ほど前のことだったと思う。彼に楽曲提供の夢があると知って意気投合し、しばらく経って一緒にやり取りを繰り返して〈HELLO! HELLO!〉の元曲が完成した。
ところがコロナ禍に突入したことで、色んなアイドルやアーティストのリリース・スケジュールもプランも大きく狂い、結果としてこの曲は宙に浮いてしまう。僕は「ここぞ」というタイミングまで大切に温めていた。
去年の秋、アルバム制作終盤になって、エレキ・ギターを弾き始めた利樹が日に日に上達していくのを見ていた時に、ふと空いていたパズルが頭の中ではパチっとハマった。今までの経験上、楽曲には必ず運命のように別の良い行き先があるものだ。そこで、英詞のままにしていて足りなかった2番の歌詞を利樹に頼むことにした。Kuboty のヘヴィで心地よく弾ける凄腕ギターは、僕の周りにあまりいないタイプで新鮮だ。共同プロデューサーでもある山形知也が加えてくれたアルペジオも、アレンジの肝となっている。
2. 君は怪獣
作詞・作曲:近藤利樹・西寺郷太
編曲:西寺郷太・近藤利樹
この曲もレコーディング終盤、何気なく「利樹も自分で作ってるなら持っておいでよ」と言ったら、本当に彼から曲が届いた。アルバム制作の最終コーナーで生まれ、勢いよく完成した2曲が、そのまま1曲目、2曲目という“アルバムの顔”に選ばれたこと自体、18歳の彼がとんでもないスピードで成長と脱皮を繰り返している証だと思う。
モータウン・ビートの曲は、野外イベントのように不特定多数が集まる場でもオーディエンスが乗りやすい。昨年秋に滋賀・琵琶湖湖畔の「イナズマ・ロック・フェス」での彼のライヴ・パフォーマンスを観たあと、オリジナルでもそのタイプのリズムがあればいいね、僕はそうアドバイスをした。
すると返ってきたのが、僕の世代で言えばポール・ウェラーが率いたバンド「THE JAM」的と唸らされるような〈君は怪獣〉。利樹は次作のタイミングで、作曲家としての才能もどんどん開花させてゆくことだろう。
作曲・作詞ともに利樹のデモを軸に、僕なりのメソッドとスパイスを振りかけて完成した。間奏はビージーズの〈モア・ザン・ア・ウーマン〉などにオマージュを捧げた目眩くストリングス・コーナー。ここは個人的に本作の中でも特に気に入っている瞬間だ。久々にベースを生で自分で弾いたのも、純粋に楽しかった。

3. WHERE
作詞:西寺郷太 作曲:山形知也
編曲:山形知也・西寺郷太
山形知也が作曲した曲に、僕が歌詞を書いた。元々はアルバムのタイトル曲にしようと考えていたほど、利樹の“再出発”そのものを背負える曲だと思っている。
僕自身も、レコード会社を移籍したり、契約が延長されなかったり、レーベルや居場所を変えながら30年間ミュージシャンとして続けてきた。心を通い合わせたレーベルやスタッフとの別れは悲しいし、もちろん残念なことでもある。けれどそれは、振り返ればいつも新しい仲間やスタッフとの出会いへと繋がる一歩でもあった。「捨てる神あれば拾う神あり」という諺の重みが、年々、身に沁みる。
一旦別れても、お互いが懸命に生きていれば、また巡り合えることがある。僕も一度離れたレーベルから声をかけられ、戻った経験があるし、スタッフや仲間も会社や環境が移り変わっていく。再会も多い。人の夢や縁は、想像以上に繋がっているのだ。利樹が30歳を越しても、きっと歌い続けられる大切な曲になると、信じている。

4. 真夏
作詞:西寺郷太 作曲:西寺郷太・山形知也
編曲:西寺郷太・山形知也

NONA REEVES の小松シゲルがドラムを、そして奥田健介が鍵盤とワウ・ギターを、そして利樹を幼少期から音楽的にサポートし続けてきた彼の「師匠」とも言えるベーシスト「砂パン(砂山淳一 )」がベースを担当。加えて僕、西寺郷太がアコースティック・ギターとコーラスを、そして共作者でもある山形知也がギターを、という、ほぼ NONA REEVES 、であり僕の最も信頼する仲間たちが大集結したような面々。

これまでにリリースされた利樹の楽曲は、プログラミングされたリズムや、歌とウクレレのみを自分でレコーディングするパターンが多かったそうで、スタジオでプロのミュージシャンの生演奏を体感することが少なかったという。自分の曲が目の前で凄腕ミュージシャンによって構築されていく瞬間に興奮している利樹が眩しかった。ライヴでも愛される曲になると思う。

5. Summer Revenge
作詞:西寺郷太 作曲:岡田和也・Sawakkuma
編曲:西寺郷太・山形知也

京都在住の岡田和也さん、Sawakkumaくんのコンビから楽曲のデモを受け取り、僕と山形知也でアレンジしたメロウでグルーヴィーな A.O.R チューン。岡田さんとは数年前から利樹も出演した「GOTOWN FREAK」というイベントを筆頭に、色んな音楽的活動を共にしているが、この素晴らしい曲が作曲家としてのデビュー作となる。

演奏メンバーは、小松、砂パン、知也、奥田と先ほどの「真夏」と同じだが、このアルバムで奥田健介はギターでなく基本「鍵盤奏者」として参加しているのが面白い。奥田がキーボード奏者としても素晴らしいことを知らない人は、彼が流暢にピアノを弾くところを目撃すると心底驚くが、出会ってから33年の日々を重ねてきた僕も毎回凄いなぁ、と驚いている。

あまりにもアダルトでアーバン・テイストな楽曲であるが故に、10代の利樹の欲のない素直なヴォーカルの旨味が凝縮されている。そして、リズム・セクション、ギターも鍵盤もウクレレも含めイントロからフェイドアウトの最後の瞬間まですべての演奏が素晴らしく、誇らしい。

6. She is a Queen
作詞:西寺郷太・近藤利樹 作曲:西寺郷太・山形知也
編曲:西寺郷太・山形知也

17歳の利樹との出会いのきっかけとなった曲。僕はウクレレ奏者としての彼の歴史を知らなかったので、純粋に彼のシンガーとしての魅力に夢中になり、この楽曲を作った。純粋に今振り返っても完成度の高いポップ・チューンだと思う。すでに元のレーベルからシングルとして配信されていることもあり、CDには収録されているが、アルバムの配信には含まれていない。利樹のウクレレが加わるとハープのような煌びやかさが増して、ドリーミーでゴージャスな多幸感に包まれることを、この曲で初めて僕は知った。ウクレレ独特の幸せの香りを僕は「竜宮城感」と呼んでいる。

7. Teenage Sunset
作詞:西寺郷太 作曲:西寺郷太・徳岡慶也・山形知也
編曲:西寺郷太・山形知也

NONA REEVES with 砂パン&知也の最強布陣の演奏。DEPAPEPE の徳岡慶也君とは20年ほどの付き合いでデビュー数年後にプロデュースを頼んでもらったり、プライベートでも飲み仲間として仲良くしている。2010年代半ばに今は無き赤坂BLITZで、NONA REEVESとDEPAPEPEの対バン・イベントが企画された際、元々一緒に作っていた〈SPECIAL LADY〉という楽曲の他にもう一曲あった方が楽しいよね、と〈SATURDAY NIGHT (SUNSET)〉という楽曲をふたりで作り、NONA REEVESと共に演奏したことがあった。レコーディングはせず、ライヴのみで披露した楽曲だったが「いつの日か形にしたい」と執念深い僕は思っていた。

今回、利樹の「歌」だけでなく、ウクレレ・プレイヤーとしてのインストゥルメンタル的な楽曲も必要だなと考えた時に、思い出したのがこの曲。徳岡君も「ぜひ!」とのことで、新しいブリッジを山形知也と書き、完成に至った。タイトルは少し悩んだが、利樹が18歳となりどんどん10代も終わりに差し掛かるというタイミングも含めてこれしかない、と〈ティーンネイジ・サンセット〉に決めた。小松シゲルと僕が会ったのも18歳だった(奥田とは19歳で)。彼のバンドでドラムを叩く福田零君が「24時を越えたら二十歳になる」というタイミングでレコーディングに見学に来ていて、岡田さんや奥田と一緒に焼肉を食べた思い出も含めて懐かしい。ミュージシャンが集まって昔ながらの「スタジオ・レコーディング」が出来たことは、今となっては贅沢な経験だったと思う。

8. BABY LOVER
作詞・作曲・編曲:西寺郷太

僕は小学生の頃から作詞・作曲をしていた。11歳でデビューし、FUJI ROCK FESTIVAL まで出演していた利樹のような10代の華々しさは全く無かったが、ずっとデモ・テープを作り多重録音で作品を残していた。その中でも最古の楽曲が〈BABY LOVER〉だ。

10年ほど前に「タモリ倶楽部」に呼んでもらい、番組内でも披露した「中学生時代の曲」だったが、昨年、長い封印を解いて冨田謙さんの素晴らしいアレンジで僕自身のソロ・アルバム《HEARTBREAK》にめでたく収録されることとなった。1985年末から1986年初頭の音源なので、約40年を経ての作品化。ライヴなどでも愛される楽曲に育っているのだが、利樹にも「合う」のでは?という声がスタッフからあがり、カヴァーしてもらう流れに。

僕からすると本当にありがたくて、曲がどんどん新しい命を授かって育っていくような、嬉しくも不思議な気持ちで利樹ヴァージョンのプロデュースをさせてもらった。僕自身のハーモニーは、冨田謙さんにしていただいたアレンジのままリミックスのような形で重ねている。大阪に暮らす利樹とリモートでレコーディングしたことも自分にとっては初めての経験で刺激的だった。

アルバム・ジャケットも僕のデザインによるものだ。真っ直ぐ見つめる「彼の今の顔」がドーン!と伝わる、新しい一歩を象徴するヴィジュアルにしたかった。利樹のキャリアはすでに長い。あまりに幼い頃にデビューしたこともあり、ぐっと伸びた身長やキャラクターも含めて成長の速度に、我々受け取り手側のスピードが追いついていない部分があったと思う。

もうすぐ19歳。ここからは、「近藤利樹」という素晴らしいアーティストとして完成した状態でさらなるキャリアを歩んでいけるはずだ。彼の「名刺代わり」になる一枚として、この《Hello! Hello!》が彼のこれから進む背中を支えてくれたら、ファンの皆さんにとっても大切な原点になれば、プロデューサーとしてこんなに嬉しいことはない。

西寺郷太
NONA REEVES
2026年2月2日、月曜日。